3月の風    寄稿者 ルピナス 

桜が一度に目覚めた。川沿いの桜並木を歩くと、自分も桜のせいになったような気分だ。
暖かかったので区の美術館に行った。こじんまりした美術館で、見ていて疲れない。
今期のテーマは「本と絵画の800年 吉野石膏所蔵の貴重書と絵画コレクション」である。この会社は社長の趣味だろうか、昔の美術をかなり所蔵していたらしい。
私が見たかったのは中世の彩飾写本である。
その昔、まだ印刷技術がなかったころ、一部は羊皮紙に書かれていたりした。聖書もそうである。羊皮紙に書かれたものは消えることがないという。
中世はきれいなみ言葉書や祈祷書などが作られていた。文字は読めなかったがたぶんラテン語だろう。
そのデザインはどれも素晴らしかった。金持ちなど特権階級の人しか持つことはできなかったはずだ。だからこそ大事にされ後の世にまで伝えられることとなったと思う。
「羊皮紙」と一括りにされるが、実際は山羊、羊、牛だったという。「どうぞ触って味わってください」とあったので手で触ってみた。どれも柔らかく、和紙のような手触りだった。
本はすべて人の手で作られる。金や多くの色彩を使った彩飾写本はとても美しかった。「聖セバスティアヌス受難の場面」1435年作、2023年に見ることができるとは。

WBCの日本優勝でにぎわっているその時、広島の友人が天国に旅立った。一度もお会いしたことがない方だったがよく電話でお話しし、手紙のやり取りをした方だった。
彼女の生活は終わったがキリスト者としての人生は多くの人の心に残るに違いない。神様は絵画や本や人の一生を通して真実を残してくださるのだ。

2023年03月24日