宿泊の旅  二泊三日で鹿児島へ おわり   寄稿者   旅女

昨夜もホテルに帰る途中で、あらかじめスマホで調べておいたお店でゆっくり夕食をいただき、部屋に戻ったのは10時を過ぎていた。連泊なのでお部屋の掃除はお断りしたが、ノアノブに大きな紙袋が下がっていて、タオルや夜着ほかアメニティー一式が詰め込まれていた。それで十分快適である。明日の予定は一言も聞かされていない。孫たちはこれから作戦会議だそうである。

ホテルの朝食は楽しい。我がFamilyツアーは朝はゆっくりである。食堂も一段落したあたりだろうゆったりしている。しかし今日は早くもチェックアウトである。10時には出なければならない。荷物を全部レンタカーに積み込んで一日県内を走るが、夕方には車を返すことになっている。それまでどこに行くのだろう。全てお任せである。なんて楽なんでしょう。

ホテルの駐車場からいよいよ出発というときに「これから、天文館通をしばらく歩いて、その後霧島温泉の方向に進む、途中で昼食かな」と発表があった。商店街は鹿児島一の繁華街だそうで、珍しい名を冠した通りが縦横に走っていた。路面電車も走っていた。名物のさつま揚げのお店がいくつもあった。揚げたてあつあつのさつま揚げを食べ歩いた。旅ならではの無作法か・・・。さつまいもやザボンの砂糖漬け、かるかん饅頭など、買い込みたかったが、どうもうまくいかない。さっさと素通りされてしまった。お土産は最後に空港で買えばいいと言われてしまった。

旅はお腹がすく。どうしてだろう。朝食が遅かったし、いつもよりたくさんいただいたはずなのに、旅の胃袋は急に別製になるらしい。言わずもがな、旅の楽しみの大きな一つは三度のお食事にある。と言って、特別なものがほしいわけではないが。このお昼も、孫たちが走りながらスマホであれこれリサーチし、一軒の隠れ家のようなおしゃれな和食のお店に入った。大満足!

車は霧島温泉郷へ入った。辺りには強烈な硫黄の匂いが立ち込めている。この匂いは好きだ。いかにも温泉らしいから。しかし私たちは温泉には入らない。駐車場に車を止めるだけで「丸尾滝」を見に行くことになった。滝は山中を分けいらなくても国道の広い道路からすぐに見えた。温泉が流れ落ちているそうで、冬は湯けむりが立つという。滝壺は硫黄のせいで美しい乳白色であった。そばの展望台からしばらく見とれていた。時々滝の中に小さな虹が架かる。何と神秘的なシーンだろう。自然は生き生きと生きている。

次に「千滝」に向かった。深い山あいの細道を進んだ。次第になお細くなり車一台がぎりぎりになり、それ以上進んだら道がなくなり後戻りも難しいほどになった。滝らしいものはなかったがよく見ると、枯れていた。やっとのことで後戻りし、Uターン出来たのでほっとした。その後、「神話の里公園」で車を止め、娘や孫たちはリフトで山頂へ。私も挑戦したかったが思いとどまり、ロードトレイン(ポッポ列車)に乗り込んで頂上で落ち合った。桜島を親しく眺め、それぞれのルートで下山した。さすがに風が冷たくなってきた。

一路空港を目指して走り出した。2時間後には機上の人となる。と、最後に空港のすぐ近くにあるもう一つの滝を見るという。一瞬ドキッとしたが、きっと時間計算は確かなのだろうと、山道をどんどん上る車に身を任せた。ところが案内図によると滝ははるか山の下の下だった。孫息子だけが大急ぎで下って行った。しばらくして汗びっしょりで帰って来た。往復全力疾走したらしい。後で写真を見たが、先の「丸尾滝」に勝る勇大な滝だったようだ。

残り時間はどんどん消えていく。果たしてお土産が買えるかしらとハラハラしだした。結果的には手際よくお土産も、機内でいただくお弁当も用意できた。搭乗口にたどり着いた時はすでに行列は機内に進んでいた。着席した時は大きな安堵の息が出た。
一分一秒も無駄のない実に見事な時間配分であった。私には超ハードであったが。しかし大きな満足感に満たされた。ともかくも彼らの歩幅、足速に付いて行けたのだのだから。もちろんずいぶん60歳の年齢差への配慮があったのだろうが。

ゆっくりとお弁当の包みを広げ、眼下に瞬く日本列島の灯を追いかけていたら、往路よりも30分も早く飛行機は羽田の滑走路に入り翼を畳んだ。京成線に乗り押上で降り東武線に乗り換えたが、ひとつの列車に乗っていたようにスムーズに進んだ。私は行きと同じショルダーバッグひとつで玄関に到着できた。『行くにも帰るにも…守られる』とのみことばの真実を甘くおいしく味わった。

今回の旅に誘われた時、これが最後だ、がんばって連れて行ってもらおうと立ち上がったが、無事に帰宅してみると、次もあるかもしれないと、に明るい温かい思いが生まれる。そう簡単には「旅女」のネームプレートは外せない。


『まことに、私のいのちの日の限り
いつくしみと恵みとが私を追ってくるでしょう。
私はいつまでも、主の家に住まいましょう』
詩篇23篇6節

2023年03月14日