創世記三九章

創世記三九章二節
主がヨセフとともにおられたので、彼は幸運な人となり、そのエジプト人の家にいた。

 聖書は前章でユダを語ると、切り替えも鮮やかにすっとヨセフの続きを語りだします。ヨセフは十人の兄たちによってたかっていじめられ、ついにミデアンの隊商に銀二〇枚で売られてしまいます。世の中には目を覆う惨劇が多いとはいえ、これ以上のことはそうざらにはないでしょう。母は異なりますが兄弟がそろいもそろって年端もいかない末弟を裸にして穴に突き落とし、挙句の果てに売り飛ばすのですから。

 そのお金は何に使ったのでしょうか。十人で一人二枚ずつ分けたのでしょうか。その場面を想像するとぞっとします。まさに鬼畜といえましょう。彼らはイシュマエルの隊商に連れて行かれるヨセフをどのように見送ったのでしょうか。泣き叫んだであろうヨセフの泣き声を聞き流すことができたのでしょうか。ヨセフの絶叫は鋭い刃物のように彼らの心に深い傷をつけたはずです。

 十数年後に、彼らはヨセフの前でその時の心情を吐露しています。一時の勢いとはいえ、残忍な行為は加害者をも苦しめるのだと思います。極悪人にも良心があるのです。まして、一つ家で育てられた兄弟ですもの、仮にも信仰者ヤコブを父とする子どもたちですもの、ヨセフへの加害は彼らの胸中を一日たりとも離れたことはなかったでしょう。

 一方ヨセフは見知らぬ国の見知らぬ家に売られていくのです。しかしです、神はヨセフとともにエジプトへ下り、ヨセフを守り助け続けます。

2023年04月05日