創世記三七章

創世記三七章二節
これはヤコブの歴史である。ヨセフは十七歳の時、彼の兄たち羊の群れを飼っていた。ヨセフは彼らの悪いうわさを父に告げた。

 いよいよここからお待ちかね愛するヨセフが登場し、以後最後の五〇章まで一気にスリリングな波乱万丈の物語が展開していきます。とはいえ、冒頭には「これはヤコブの歴史である」と断り書きがされているのです。エサウの歴史はわずかに一章です。歴然たるその差には驚きます。ヤコブの一二人の息子たちはイスラエル一二部族の祖になっていきます。彼らはなぜこうまで輝かしい光をいただくのでしょうか。神様はなぜ『アブラハムの神、イサクの神、ヤコブの神』と呼ばれることを許したのでしょうか。この謎を解くカギはどこにあるのでしょうか。人間の業ではなく、ひとえに神様の選び、神様のご意志、神様のご計画としかいえません。それが正解なのでしょう。人はひれ伏すのみです。 

 ヨセフが生まれたときにはすでに十人の兄がいました。しかも三人もの異母たちによる兄たちです。もつれ合った糸玉のような複雑不穏な家庭に生まれたのです。ヨセフの母は父ヤコブの最愛の妻ラケルです。待って待って生まれた待望の子です。当然、ヤコブはヨセフを盲愛します。自分が母リベカに偏愛されたように。そもそもこれこそがこの一族の悲劇惨劇の出発点なのに、です。歴史は繰り返すのか、それとも人は自分の生育史の呪縛から逃れられないのでしょうか。こうしてヨセフは特別待遇され、兄たちの怒りと嫉妬を招くことになります。

2023年04月03日