創世記一〇章

創世記一〇章一節
これはノアの息子セム、ハム、ヤペテの歴史である。大洪水の後に彼らに子どもが生まれた。

 水の引いた初々しい大地に下り立ったノア家族は、第一に神様に感謝の礼拝をささげました。神様はささげものを喜び、雲の中に虹を立てて祝福を示しました。麗しい礼拝でしたが、神様は、彼らの罪をあがなうためには彼らのいのちを要求すると、謎めいた辛口のお言葉を言い渡しました。義人ノアの家族でも子々孫々に至るまで義人で通せるわけはないと見通しておられたのでしょうか。

 取り出した一節はその後の『大洪水の後に、子どもが生まれた』との一言です。ずしっと臓腑にこたえます。意味深長なお言葉です。彼らは洪水の前ではなく、在船の間でもなく、洪水後に生まれたのです。洪水を知らない人たちです。現代で言えば、戦後っ子、原爆を知らない人たち、新人類といえないでしょうか。彼らは祝福された大地、エデンの園のような楽園で、あふれるばかりの産物に囲まれて豊かに育てられました。ハングリーなど知らないのです。暖衣飽食の時代の子です。

 楽園には罪が付いて回ります。あのアダムとエバの時のように。九章ですでにノアは二男ハムの愚行を嘆いて『のろわれよ、カナン(ハムの息子)』といい、長男と三男には『ほめたたえよ、セムの神、主を。カナンは彼のしもべとなれ。神がヤペテを広げ、セムの天幕に住まわせるように』と予言をしています。

ノアの深い嘆息が聞こえてくるようです。 

2023年03月07日