創世記三六章

創世記三六章一節
これはエサウ、すなわち、エドムの歴史である。エサウはカナン人の中から妻をめとった。

前の章まではヤコブが主人公、この後の章からはヨセフ物語が延々と続くそのはざまにまるで押しつぶされそうに肩身を狭くして、しかし、丸ごと一章を埋めているのがエサウの歴史です。ああ、神様は粗野で愚鈍なエサウをも憐れんでおられるのだとホッとするのも一瞬で、「エサウはカナン人の中から妻をめとった」がぐさりと胸を突いてきます。裁判官が権威を持って、これがエサウの罪だ、エサウの罪はここにある、これは神の国には断罪に値すると宣言しているような厳しさを感じます。無数の人の名、士族の名はやがてエドム人として巨大な民族になり、イスラエルを悩ます敵になるのです。この章は読んでいても一筋の光も見えず、知らない街を見るようで、できるだけ大急ぎで通り過ぎたくなります。

 カナン人の中から妻をめとったの一言のなかに神様の悲しみ、嘆き、怒りが満ち満ちています。エサウはカナン人の中から妻をめとってはいけなかったのです。弟ヤコブがわざわざ遠路パダン・アラムまで伴侶を求めに旅にでたことは重々承知していたはずです。両親であるイサクとリベカの結婚のいきさつも耳の底にこびりついていたはずです。それなのに、です、カナン人の女を娶るのです。思うに、エサウはいっときの激情を制することができないのです。空腹に勝てず一椀のあつもので長子の権利を売ってしまう人なのです。

2023年04月02日