創世記二一章

創世記二一章一節
主は約束されたとおり、サラを顧みて、仰せられたとおりにサラになさった。

 サラを顧みて、サラになさった、です。いつも主人公はアブラハムですが、その陰にいるサラにも神様のあわれみと恵みは注がれていたのです。顧みれば、サラは夫アブラハムがまだアブラムと呼ばれていたころから、カナンへの冒険の旅に従ってきました。

 カナンに飢饉が起こった時、エジプトへ避難しましたが、夫はサラを妹だと触れ回ったのです。サラは宮廷へ召し抱えられました。また、ネゲブでは豪族アビメレクにも妹だと言ったことから召しいれられました。二回とも神様の介入で危ういところを逃れましたが、サラの心中は穏やかならず、恐れ、悩み苦しんだことでしょう。

最大の苦悩は、侍女ハガルの腹を借りてアブラハムの子を産ませたことでしょう。跡取りを望む夫の願いをかなえるためにはそれしかないと、悲壮な決意をしたのだと思います。しかし理屈では割り切れても、生身の人間です、感情が分裂しました。サラはハガルにきつく当たってしまいました。無理からぬ心情だと、あわれな女ごころに共感します。

 神様はじっとサラを見守り続け、失敗を包み込み、サラに子どもを与えるのです。サラは二五年の苦渋の歳月を一瞬で忘れてしまえるような歓喜をいただき、『国々の母』としての栄誉ある名称、サラの名をいただいたのでした。

 主のあわれみはつきることがない。 

2023年03月18日