創世記三四章

創世記三四章二七節
彼らはハモルとシェケムを剣の刃で殺し、シェケムの家からディナを連れ出して行った。

 厄介な事柄というものはあとからあとから追いかけてくるものです。問題の原因が全くの災難なのか、こちらにも非があるのか、少なくとも当事者には判別できない場合が多いのです。ヤコブ一族郎党はようやくシェケムの町はずれに地を得て、一息もふた息もつきながら枕を高くして夜を過ごし、晴れやかな朝を迎え、平穏な日々を喜んだことでしょう。

 家族の一人一人に柔らかな笑顔が浮かび、ずっと張り詰めていた神経が緩むのを一番早く鋭く感じるのは若者、それも女性ではないでしょうか。末娘のディナはまるで風に舞う蝶のようにひらひらと異民族の街なかへ入っていったのです。隣の家に遊びにでも行くように無防備のままに。美しい娘は一瞬でシェケムの若者のハートを射抜きます。族長ハモルの息子シェケムは激情のままにディナを凌辱、そのまま離さず、ぜひ嫁にもらってくれと父ハモルにねだります。父はディナを値踏みします。結婚は取引です。族長はヤコブの財産を素早く看破したのでしょう。縁続きになれば互いの得になるだろうとほのめかしながら結婚を願い出ます。ところが、ヤコブの息子たちは妹の受けた屈辱にいきりたち、凄惨な復讐をします。
 結局、ヤコブ一族は逆襲を恐れて、再び流浪の民になる羽目に陥ります。ヤコブはいつになったら安住の地を得られるのでしょう……。

2023年03月31日