創世記三三章

創世記三三章三節
ヤコブ自身は、彼らの先に立って進んだ。彼は、兄エサウに近づくまで、地に七回も地に伏しておじぎをした。

 兄エサウ恐ろしさに、ヤボクの川を渡れなかったヤコブでしたが、一晩中神様に叫び続けて祝福を勝ち取ると、勇気凛凛、群れの先頭に立って会見の場へ進みます。神様を信じ切ると人はここまで変われるのでしょうか。「彼らの先に立って―――」とは見逃せないひとことです。おそらくヤコブの心は平安と喜びに満ちていたのでしょう。  

 すでに莫大な贈り物が先行していますが、兄をみると、遠くから地に伏してなんどもなんどもおじぎをしました。一回や二回ならだれでもできるでしょう。しかし聖書は七回もと記します。土にまみれ砂を浴びてなお地に伏すのです。単なる恐れやうわべだけではここまではできません。心底から過去の非を詫び、赦しを乞う悔いくずおれた心情があふれ出ています。四百人の郎党を引き連れて迎えに出たエサウの本意がどこにあったかわかりませんが、これだけ礼を尽くされれば、あったかもしれない憎悪も敵意も影をひそめざるを得ません。「エサウは、走ってきて、彼を抱き、首に抱きついて口づけし、ふたりは泣いた」のです。 

 ラバンのもとで懊悩苦悩していたヤコブに、生まれ故郷に帰りなさいと言われた神様は、兄とも和解せよとの意を含ませたに相違ありません。ヤコブは徹頭徹尾身を低くしたことでエサウに赦され、積年の関係は修復され、シェケムの町はずれに宿営地を得ました。 

2023年03月30日