創世記四六章

創世記四六章二九節
ヨセフは車を整え、父イスラエルを迎えるためにゴシェンヘ上った。そして父に会うなり、父の首に抱きつき、その首にすがって泣き続けた。

 ベニヤミンも交えて無傷で帰還した息子たちから、ヨセフ生存の知らせを聞いたヤコブの驚きはいかばかりだったでしょう。信じ難さは、目の前にヨセフを見ながら声も出なかった兄たちよりはるかに勝っていたでしょう。すべての思考は停止し、目は開いていても何も見ていなかったでしょう。「ぼんやりしていた」とは至言です。

一度はヨセフを失った悲しみに我を失ったヤコブですが、この度は歓喜の絶頂へ向かう、ふもとの忘我です。

 歓喜の現実へ引き戻してくれたのはヨセフが用意してくれた車でした。それを見ると俄然目が覚めたように元気になり、死なないうちに会いに行こうと、エジプト行きを決心するのです。やがて、総勢七〇人がカナンを後にします。この一族が、四三〇年の後に出エジプトする時には壮年の男子だけでも約六〇万人になっていました。

ヤコブ一行は途中ベエル・シェバで神にいけにえをささげます。神はヤコブに「エジプトに下ることを恐れるな、必ずカナンに導き上る」と約束します。
 一方ヨセフはゴシェンまで父たちを出迎えます。ヨセフは父を見るなり首に抱きついて泣き続けるのです。泣き続けるヨセフとヤコブです。一七歳で別れてから二〇年あまりが経っていたはずです。しかしヨセフは少年のように抱きついて泣き続けたのです。ああ、兄たちも泣いたでしょう。総勢七〇人が泣き続けたでしょう。

2023年04月09日