創世記三章

創世記三章九節
神である主は、人に呼びかけ、彼に仰せられた「あなたは、どこにいるのか」。
 
 何と悲痛な呼びかけでしょう。迷子の我が子を探す親の必死の叫びです。声のぬしは神様、迷子は人間なのです。

 一章を光り輝く金色の章とすれば、二章は愛の色、ピンク、ピンクといえましょう。しかし、三章は一転、暗雲立ち込める黒灰色に覆われています。一筋の光も見えません。

 神様との約束を反故にしたアダム夫婦は、神様に合わせる顔がなくて、草木の陰に隠れてしまったのです。『見よ、それは非常によかった』と、喜びのうちに造られた神様との関係が、早くも破たんの危機に直面しています。愛の絆を断ち切ろうとするのは人間の内にある欲望です。エバの手をひょいと木の実に向かわせたものは『食べるのによく、目に慕わしく』でした。一瞬の欲です、出来心と言える程度のものかもしれません。しかし、それが、神様との関係を破壊し、全人類に死をもたらした凄惨な罪だったとは、彼らはその時、微塵も考えなかったでしょう。まして、この罪を償うためには、神様は愛する独り子イエス・キリストのいのちを代償にしなければならなかったとは、露ほども知らなかったでしょう。

 今も『あなたは、どこにいるのか』と、神様を嘆かしていいでしょうか。
 その呼びかけを聞き分ける耳を、神様は備えてくださっているはずです。

2023年02月28日