創世記四二章

創世記四十二章三節
そこで、ヨセフの十人の兄弟はエジプトで穀物を買うために、下って行った。

 エジプトを襲った未曽有の飢饉は、カナンにもおよび、ヤコブ一族も飢餓に瀕します。そこへ、エジプトには多くの穀物の備蓄があり、内外から大勢の人たちが買い付けに行っているとの風のうわさが伝わってきます。今から三千年も、四千年も前のこと、思えば一番欠けているのは情報の手段だったでしょう。

 しかし、風が伝えるのです。風は神様の足です。ヤコブは十人の息子たちに食料を買いに行かせます。エジプトの宰相が、我が忘れじの息子ヨセフなどとは露も知らずに。もちろん兄たちも知りません。この時ヤコブは末息子ベニヤミンだけは行かせないのです。まだヤコブの偏愛は変わっていません。ところがこのことがことを複雑にする原因になるのです。

 十人の兄たちはヨセフの前に拝むようにひれ伏して食料を乞います。かつてヨセフの見た夢の通りになったのです。あの夢は兄たちの怒りを買い、ヨセフいじめの原因を作りましたが、まさに神様が見させたのです。ヨセフはすぐに兄たちだと気がつきます。しかしその場で名乗ったりしません。ヨセフは一計を巡らし、兄たちをスパイ扱いして詰問します。彼らは怯えながら言うのです「ああ、われわれは弟のことで罰を受けているのだなあ。あれがわれわれにあわれみを請うたたとき、彼の心の苦しみを見ながら、われわれは聞き入れなかった」。 

結局、ヨセフは彼らに食料を持たせて帰しますが、弟を連れて再度出直すように命じ、シメオンを人質にします。息詰るような場面が続いていきます。

2023年04月08日