はじめに   伝わる不思議さ       理事長 池田 勇人
      
伝えようとする気持ちが強すぎると、かえって伝わらないことがあります。それは無理やり押し付けられる感じがあって、受け取る側の心が閉じてしまうからです。また伝える側も熱心なあまり、受け取りやすさへの配慮が足りなくなるからでしょう。
しかし伝える熱情が弱いと、なぜ伝えねばならないのかとの疑念を与えてしまいます。感情の伝達が、言葉7%、声38%、表情55%によるとまさに言われる通りです。
そのような伝達の一般的な流れがあったとしても、こと福音の受容に関しては、伝わるという事自体すでに神のみわざとしか言い得ないものがあります。言葉足らずの、しかも罪びとの証が伝わるとすれば、それはもうご聖霊による奇跡。
「私の心はすばらしいことばでわき立っている。私は王に私の作ったものを語ろう。
私の舌は巧みな書記の筆」(詩篇45・1)
「物書く人の筆として」(新共同訳)も、興味ある訳です。王のための祝婚歌ですが、ソロモン以上の王、つまりメシア詩篇として捉えると、花婿なるキリストへの憧憬・讃美が沸々と湧いてきます。その熱き思いをもってペンの仲間達が、ここに一冊の作品集を、祈りつつ編み出しました。