窓辺に残ったもの    寄稿者 季想

朝、書斎に入り、机に向かう前に窓の外を眺めていました。そこには、いつもと変わらない裏山がありました。冬を迎え、葉を落とした姿は色味も乏しく、どこか寂しさを帯びています。それでも、その稜線は崩れることなく、静かにそこに在り続けていました。

しばらく見ているうちに、理由のはっきりしない安堵のようなものが、胸の奥に触れた気がしました。何かを考えたわけでも、答えを得たわけでもありません。ただ、立ち止まることを許された一瞬でした。

しかし、その感覚は長くは続きません。時計に目を戻し、机に向かえば、いつもの時間が再び動き出します。それでも、消えてしまったはずのあの一瞬が、完全に失われたとは思えないのです。

目に見えないものは、すぐに過ぎ去ります。けれども、人の心がふと緩むとき、そこに「恐れるな」という声が、形を持たずに寄り添うことがあるのかもしれません。そう思いながら、今日もまた窓を背に、静かに一日を始めました。

2026年02月15日