ある歌人の師弟間で交わされた、こんな話があります。
弟子が師に尋ねました。「いい歌を作るには、どうしたらいいのでしょうか」。
その問いに、師は少し間を置いて答えます。「まず、いい人間になることです」。
技術や才能の話ではない、その一言が心に残りました。
では、「いい人間」とはどんな人なのでしょうか。
師は、それ以上の説明をしませんでした。おそらく、それは言葉で教えられるものではなく、生き方の中で問い続けていくものだからでしょう。歌は人の内から生まれ、その人自身を映し出すものだからだと思います。
聖書には「人は口から出る言葉によって、その心が知られる」(マタイ12章34節)とあります。言葉や表現の源は、心のあり方そのものです。信仰もまた、行いや言葉の前に、神の前でどう生きるかが静かに問われます。
よい歌を願う問いは、よく生きたいという願いにつながっているのかもしれません。答えを急がず、自らを省みつつ歩む中で、神は人を整えてくださる。その歩みの先に、言葉もまた与えられるのだと思いました。