たいていの人が一度は踏んだ世界の名作読書街道も、たいていの人は途中止めのままではないだろうか。ますます極めていった人は大江健三郎を代表とするその道のプロになっている。その彼らが、体験から再読、再々読を勧めている。きっと魅惑的な未知の世界を発見したのだろう。
ドストエフスキーの作品は過去に有名なものだけはどうやら読んだ。この5,6年の間に再読もした。しかし『カラマ…』だけは手をつけられなかった。エネルギーがないのだ。
ところが怠惰心を刺激してくるものに出会った。大江氏の『「新しい人」の方へ』(2003年9月30日第1刷り発行 朝日新聞社)の中である。その中の《子どものためのカラマーゾフ》の章で大江氏はこの長編を子どもにも勧めているのである。子どもに適した読み方を披露しながら。
私の中に忽然と目を覚ましたものがあった。『カラマ…』は一応読んだとは言え、読んだとは言えない読み方であり、ほとんど何も理解してはいない。しかし、断片的に記憶しているシーンがあった。それはひとえにドスト…氏の小説家としての手腕によるものだろう。その忘れがたいシーンを大江氏は子どもたちに読めと勧めているのである。そのときである、再読の種がまかれたのだ。その種が今ようやくかそけき芽を出したと言う次第である。
いっしょに読みませんかとの誘いに、さっそく善意と友情にあふれる方々が名乗りを上げてくださった。今日ももう一声あげます。ご一緒しませんか『カラマーゾフの兄弟』読破ツアーに。どんな風向きになるか、先のことは希望の風にまかせましょう。