イエス・キリストの営業マン その2   投稿者 希望の風(掲載日2006年9月)

H氏は若い日から日本の世界的企業某メーカーの販売店に営業マンとして勤務していた。営業は苦手だと言いつつも、口より先に身体の動く方で、次第に信望を得て成績を伸ばしていった。日本の経済も高度成長を経てなお上昇を続け、やがて一億総中流意識のバブル期を迎えていた。氏は日本全国に得意先を持つ優秀な営業マンとして揺るがない地位を築いていった。社内の営業コンテストでは連続日本一に輝き、文字通り飛ぶ鳥を落す勢いであった。

バブルが弾けるころ、氏は上司と名コンビを組んで月商数千万の商いをするようになっていた。1989年7月、一番の得意先から入るべき入金がなかった。信頼し合っていた相手であったが、いいしれぬ胸騒ぎを感じて、飛行機で駆けつけた。会社はもぬけの殻だった。夜逃げされてしまったのである。どんなに手を尽くしても行方がつかめなかった。

氏は、上司に申し訳ない、会社に申し訳ない、おめおめと会社に戻り、上司に会わせる顔がない、死んでお詫びをしたいと、死に場所を探した。

ところで、H氏にはすばらしい夫人がおられた。若き日、H氏は激しく心を揺さぶられ奪われ、人を通してプロポーズした。現下に断られた。理由は、クリスチャンでない人とは結婚しません、であった。彼女は熱烈なクリスチャンだった。が、氏は引き下がらなかった。彼女もけっして首を縦にはしなかった。やがて根負けした彼女は、教会に行ってクリスチャンになったら考えましょうと条件を出した。

氏は教会へ飛んでいった。そんなに言うなら、クリスチャンでも何でもなってやろうと、熱心に教会生活を続けた。ついにH氏は洗礼を受け、晴れて結婚した。が、氏は、自分は神をも自分自身も欺いていた。信仰なんかなかった。自分ほどの罪人は二人といないと、密かに思い、罪の意識に悩み続けた。そこから逃れるためにも、がむしゃらに働いた。しかし夫人も、教会も欺かれてはいなかった。H氏は今にすばらしい信仰者になってイエス・キリストを愛し、命がけで働く人になるだろと、信じて彼を受け入れ、彼のために祈り続けた。

氏は、営業マンとしての名声が高くなるにつれて、教会生活から離れていった。実際、日曜日は接待で使わなければならなかった。夫人は夫をなじることなく、子どもたちの手を引いてひたすら教会生活に励んだ。

ついに死にきれず、H氏は責任者の上司に土下座を覚悟で会社に帰っていった。ところが上司は思いもかけないことばで氏を出迎えた。(続く)

2025年09月07日