午後から所用で出かけました。帰途、最寄りのJRに着いたのが4時過ぎていました。夕飯のお買い物をしてしまおうと駅ビルへ急ぎました。でも、まず娘に連絡を入れて、母の様子を聞いてからにしようとバッグに手を入れて携帯を取り出そうとしました。
ないのです。思い出すと、入れた記憶がありません。忘れてしまったのです。
そうなんです、久しぶりに無携帯だったのです。
公衆電話や電話ボックスはめったに見つかりません。それでも、近くにあったので駆けよりました。人がいます。若い女の子、ああ、これはまずい、長電話に決まっている。
でも、あえて、おばさんの心臓で近くに寄りますと、私を見たようでした。しかし終わる気配はなく、うるさいと思ったのか、くるりと私に背を向けました。
こまったなあ、どのくらいかかるのだろう、他を探そうか。
いやいや、まだ1分も経っていない。がまん、がまん。
思ったよりずっと早く女の子は受話器をかけて出てきました。
どうぞと言って、ドアを大きく開けてくれました。私を気にして切り上げたようなのです。すっかりうれしくなり、苦々しく思ったことを反省しながら、すかさずありがとうとお礼を言いました。女の子も笑顔を返してくれました。
娘たちもこれから外出とのこと。はやく帰らなければと、気が気ではありません。簡単に買い物を済ませてバス停へいそぎました。と、若い女性が駆けよってきて、これ、落しませんでしたかと、見せたのはなんと私のマフラーです。びっくりしました。
えっ?今見ていたら、落ちたので…。まあ、ありがとう、ありがとう。私は半分叫び声でした。
女性が戻っていく先を見ると、スタバに入っていき、通路側のカウンターに掛けました。私は思わず精一杯の笑顔でお辞儀をしますと、お隣りのお友だちらしき女性と二人で笑顔を返してくれました。電話ボックスの女の子と同様に爽やかな女性でした。
今時の若者たちときたら…と、なにかと評判のよくない若者たちですが、立て続けに、女性たちの好意に出会ってみて、ワンパターンの見方をしたら大間違いだと気づきました。
彼女たちはごく自然体で、気負いもなく、しかし明るく快活でした。希望の風を感じました。
角を曲がればもう我が家です。ほっと大きく息をして、見上げれば十二夜の月が、どことなくのんびりと天空を独り占めしているではありませんか。月と言い、あの女性たちと言い、天も地も師走の世知辛さは見えません。あたふたと独り相撲しているのは私だけだったのです。