『「新しい人」の方へ』  大江健三郎 その2  投稿者 希望の風(掲載日2006年4月10日(月))

本書の文体であるが、「です」、「ます」調の敬体が使われているのがまず、親しみを感じさてくれる。対象も若い人、もっと若く十代前半のいわゆる生徒たち向け。もちろん氏は大人の読者も計算に入れているだろうけれど。

15篇の独立した話から成っている。氏のご家庭のこと、子ども時代のこと、ノーベル文学賞受賞のことなど話題は豊富で楽しい。一篇一篇についてものが言いたくなるほど、興味深いが、その中から特に考えさせれ、教えられたに2篇について書いてみる。

『知識人になる夢』について その1
まず、大江氏は「知識人」を次のように定義している。
一生の仕事を持ち、若い時から勉強し、続け、それが人柄になっている人、その仕事の根本になることを子供にもわかる言葉でユーモアもこめて話せる人、自分の生き方に責任の取れる人、周囲の人たちとも一緒にやっていく気持ちを持っている人。自分の生きている社会、世界のことを考えている人、他の人の意見を理解できる人、あまり遠くない未来について自分としての見通しを持っている人、持てなければ、それを悲しんでいる人。
具体的にと言われたら、たとえば、夏目漱石を上げたいと思います、と。

高校2年生の時フランス文学者渡辺一夫を本で知り、この人がほんとうの「知識人」だ、先生の教えておられる大学に行こうと自分にいい、お母さんに「知識人の仲間になろうと思います」と意志を伝える。以来大江氏は受験勉強中の一年を除いて50年以上も「知識人」になるための練習、生活の基本に読書を置いて、そのようにしてきた。(続く)

2025年04月10日