はがき 寄稿者 ルピナス

昔からはがきを出すのが趣味である。主に高齢者や病気の方に出していたが、気が付くとめっきり出す人が少なくなっていた。

昔、郵便屋さんがことりと出す音を、母は楽しみにしていた。大体同じ時間帯に来るから、そのころになると耳をそばだてていたのだ。母あてに来る郵便物はほとんどなかったが、そっと玄関の戸を開ける母の姿は毎回期待に満ちていた。
教会の中で高齢者が増え、施設に入る人が出てきたのはもうかなり前だ。昔は訪問などしていたが、コロナに入るとそうもいかず、はがき訪問が多くなった。中でも教会学校で長いこと一緒に奉仕していた友が施設暮らしになったときは、もう頻繁に出した。

彼女は定年までは優秀な社会人で、多忙の中教会奉仕も率先してやっていた。定年後は一人でお母さまを世話し、百歳越まで頑張ったが、母上が亡くなると自分が倒れて施設暮らしになってしまった。彼女に外の空気を送りたい、あんなに好きだった教会を覚えていてもらいたい、そんな思いではがきを送り続けている。

施設生活が長くなり痴呆も進んできた。けれど教会からの郵便や手紙にはよく反応するという。たまには教会にはがきを書いたらと家族は促すが、彼女は「いいの、だって毎週あっているから」というそうだ。さっき教会から帰ってきたばかりとのこと。時空を超えて彼女は毎週教会の交わりにあずかっているのである。一枚のはがきが昔と今をつないでいる。
この秋から郵便代が値上げになる。嘆かわしいと思っているのは私だけではあるまい。

2024年01月29日