雪が降った日      寄稿者 色えんぴつ

東京に雪が降った。もう、大騒ぎ。
不要不急の場合以外は外出しないでとテレビが言うので、午後からは家にいた。
若い現役の世代の人は大変だなあとつくづく思う。
窓から見る雪はきれいだ。暖かい部屋でショウガ紅茶を飲みながら過ごす。

もうだいぶ前、老人ホームに入った叔父をみんなで見舞った。埼玉の叔母は我が家に泊まって車数台でホームに集まった。
家を出るときは良い天気だったが、食事の後、急に空が暗くなり、雪が降ってきた。
車で来ていた人はたいへん。私は埼玉の叔母を途中まで送っていくことになった。
荻窪から新宿へ、山手線で西日暮里へ、雨と雪のホームをお年寄りと歩くのは大変な緊張だった。転ばないようにとただそれだけだった。
雪が降るとその日を思い出す。
その日に集まった人の半分以上が今は天国だ。我が家が一番年長になってしまった。

雪の次の日、相変わらず空は曇っていた。その日の新聞で萩原朔太郎の詩を知った。
「黒い風琴」
  おるがんをお弾きなさい 女の人よ
  かるく やさしく しめやかに
  雪のふってゐる 昔のように
ネットで読んでみた。風琴はオルガンのこと。レクイエムを弾くのだからパイプオルガンらしい。真似をして古いリードオルガンで讃美歌を弾いた。

2024年02月07日