電話口の読み聞かせ   寄稿者 希望の風

孫のMちゃん(小学一年生)が電話してきた。
なんどもかけたが留守でがっかりしていると娘からメールがあった。次女のほうにもかけているが繋がらないと嘆いているそうだ。

何事かと聞けば、
夏休みの読書感想文が入選したのでうれしくてたまらず、聞いてもらいたくて電話したらしいとのこと。校内で選ばれたことは前に聞いていた。それを、学校がどこかの読書コンクールに出したようだ。このたびはそこでの入選らしい。それはうれしいだろう。私だってこんなにうれしいことはない。ばばバカですから。

先に兄のSくん(小学四年生)が「省エネ」に関する新聞記事を収集して、三重県のコンクールに入賞し、りっぱな賞状をいただいた。Mちゃんはひそかに自分も欲しいと思っていたようだ。だからこのたびの入選は彼女にとっては二倍三倍の喜びなのだ。

「ねえ、夏休みに読書感想文、書いたでしょう。何かもらえるって先生が言ってた。いいでしょう。すごいでしょう。あの本よ、こっちに来たとき買ってくれたでしょう」
声が弾んでいる。「おめでとう!よかったね。どんなこと書いたの」
「ここにあるから読んであげる」「そう、読んで、読んでよ」
Mちゃんは自分の感想文を始めから終わりまで全部読み上げた。なるほど、ところどころ彼女らしいユニークな言葉使いがあって楽しくできている。

「その本、全部知りたいなあ、今度行ったとき読ませてね」「今、読んであげる」
えっ、そこまでは…、私は多少あわてた。いくら何でもそれは遠慮したい。「何ページあるの。長いんでしょう」
「大丈夫、大丈夫、読んであげるよ」 「そう…」私は覚悟した。かくして、Mちゃんのおばばへの読み聞かせが始まった。

たいへんなことになった。でも、今さら途中で断れない。受話器がくるしい。せめてリラックスのスタイルでと、深く椅子に身を埋めて聞くことにした。

ところが、おもしろいお話しなのである。「フクダ屋のプリン」という。次第に身を乗り出し、耳を澄ませて一語一句しっかり聞き取った。時にハッとするところもあり、ぐっと胸に来るところもあってすっかり引き込まれてしまった。

「はい、それでおしまい」とMちゃんの声がする。何ページだったのだろう。ちっとも退屈しなかった。あっという間であった。孫に本を朗読してもらうなんて、こんなおばばがいるかしらと、幸せ感に顔がほころんでしまった。キッズの光の風、希望の風が吹いていた。

そうそう、近いうちに、いただくであろう賞状にもおめにかかれるでしょう。

『孫たちは老人の冠』箴言17章6節

2023年12月12日