紅葉     寄稿者 タンポポパラダイス

職場の女子社員が「お土産です」と日光のお菓子を配った。「日光?」「はい、紅葉を観てきました。とても綺麗でした」そんなやり取りの後、日光での思い出が浮かんできた。

日光には二回ほど行ったことがある。どちらも、紅葉目当てではなく、中禅寺湖にある湖上苑という温泉宿に行きたかったからで、一回目は、娘二人がまだ学生の時で、二回目は、娘二人が嫁いだ後で、家内と二人で同じ宿に泊まった。

どちらの時も、紅葉で有名な、いろは坂を車で通ったはずだけれど、全く季節違いで紅葉は目にしていない。
思い出に残っているのは、中禅寺湖で家族全員で船に乗り、バタバタとペダルを漕いだこと、その時、なんともいえない一体感が感じられたこと、そして、夕食の時に湖を眺めながら、湖の上を歩かれたと伝えられる主イエスを想いつつ、当時、職場で問題を抱えていた自分の悩みを主に委ねて祈ったこと、一緒に食事をしていた次女がこれまた、悩みを抱えていたらしく、急に気分が悪くなり部屋に戻ってしまったこと、後で聞いたところ、初めて海外(カンボジア)に行くと予定をしたらいのだが、本当は不安で、悩んでいたらしい。そのストレスが込み上げてきたらしい。彼女も人知れず、湖を渡れるのかどうかと葛藤を抱えていたのだと知った。

二回目は真冬。娘二人が嫁ぎ、無性に湖上苑に行きたくなって、向かったのだけど、帰りにひどい積雪になり、タイヤチェーンを巻いた車であのいろは坂をヒヤヒヤしながら降りた。この時も紅葉とは出会えていない。

日光といえば、紅葉なのに、小生にとっては、湖、不安、祈り、そんな想いを連想させる場所になってしまった。

娘二人に、それぞれ、孫が恵まれ、小生もようやく年明け、ひとまず定年を迎えることになった。今度は、湖ではなく紅葉の恵みを喜ぶ旅をするために、同じ宿に行きたいな、、そんなことを想ったりしている。

できれば、孫たちと一緒に。

2023年11月06日