切り抜き     寄稿者  ルピナス

毎日読む新聞に、時として切り抜いて取っておきたい記事がある。若い頃はよくスクラップなどにため込んだものだが、最近は切って取り置きだけしている。ところが数か月たって読み返してみると、なぜあんなにも熱い思いで切り抜いたのかと思うこともあるのだ。それらはすぐに処分される。

先日、小さな切り抜きを見つけた。A新聞の『折々のことば』というコラムである。鷲田清一氏が選んだ一文が毎朝紹介されている。昨年5月に見つけた記事だ。このコラムは心の中にしまい込んだ。

『文章を書くということは文脈を作ることになるのです』柳田邦男 大切な人を失ったり、瀕死の病に罹ったりすると、人は衝撃を受けてひどい混乱状態に陥る。が、その体験を語り、書くことで、散らかった思いを僅かなりとも整理できる。…「生きなおす力」を得ることである。講演「物語としての人生」から。

どうしようもない思いに反抗することはできない。かといって納得もできない。そんな時書くことを通して受け入れることもあるのだ。なるほど。

2021年02月26日