限りなくゼロに向かって   寄稿者 草枕

10月に入り、今年もあと四分の一になってしまった。この一年も、一日としてコロナ禍を思わない日はなく、聞かない日はなかった。まだまだ続くだろうけれど、ひとまず今までにない大波であった第5波が収まりつつあり、全国的に規制の宣言が解除されたことは大きな喜びである。

すわっ!それっ!と、家を飛び出すようなことはゆめゆめない。しかし、頭のモードは動きつつある。2年も仕方なくクローズしてきた「集い」が再開できるかな、病院や施設の固い扉が開かれたらあの友、この友に会いに行けるかな、ずっとメールやラインで会いたいね、会いたいねとくり返してきた親友たちとハグできるかな(いやいや、会えても接触はできない!)、親族たちの家を訪問できるかな、我が家に招けるかな・・・。希望の羽は空高く羽ばたく。しかし、この約2年間でしっかり身に付いた感染予防の重ね衣は当分脱げないだろう。

A新聞のコラムに、「おっかなびっくり」くらいに解禁するのがいいだろうとあった。久しぶりに「おっかなびっくり」に出会って、思わず笑ってしまったが、さすがにプロの記者だ。鋭いアンテナからの情報キャッチと直ちに的確な言葉への「置換力」に感服する。

「おっかなびっくり」は東京の下町言葉で、関東地域ではよく使われる。今では全国どこでも重宝がられる愛嬌のある言葉だが、なんとなく地域性を感じる。私にはなじみ深く懐かしい。もっとも、言葉の出身地はいろいろな説があるらしいが。

ともあれ、コロナ禍を差し示すいくつかの数字が限りなく「ゼロ」に近づいていくことを願う。今回の波の予想外の収束はワクチン効果も一因とされる。そう思う。折しも、批判され続けた不幸な短命内閣が去る。ワクチン効果は苦闘の実であろうか。第5波縮小の置き土産に感謝します。

2021年10月03日