オルガン修理    寄稿者 色えんぴつ  

教会のオルガンがおかしくなった。
ある音がビーっと変な音を出す。高音部も弱い音になるところがある。
教会の奏楽者は専門家ではなく、弾ける会員が奉仕している。音大出身だったり、ピアノが趣味だったり、子供のころ習っていたからという人もいる。専門的に弾ける人ばかりではないので、奏楽者はいつも緊張している。信仰があるから弾けるわけではない。たゆまぬ努力が要求される。
音の異変に気付いたのは第一オルガニストのKさんだ。毎日このオルガンで練習している。上手な人が努力するからいつも素晴らしい奏楽だ。だが最近ビーと音がする。
リードを外すとビーという音は出なくなると教えられた。ビー音がでない代わりに本来のその音も出なくなった。でもオルガン曲は和音が多いから目立つことはない。

ようやく専門の人に来てもらうことができた。
音大出身の方で、今はリードオルガンの普及と修理に係る方だ。重そうな道具箱をもって教会にやってきた。すぐに中を開いてリードの点検が始まった。
原因は冬場の乾燥だった。リードと中の木組みの間に隙間ができたからだった。湿度が高くなったからか音は戻っていた。少しの微調整だけで済んだ。
その方が簡単な曲を初見で弾いてくれた。ペダルの踏み方でこうも違うと丁寧に教えてくれた。一瞬、そこにかすかな風が流れた。ピアニッシモを弾くときは「ごめんあそばせ」という気持ちで手と足をひそかに動かしてと教えてくれた。古風な表現がおもしろかった。

オルガンは豪華な音も繊細な音も表現できるのだ。まるで私たちの人生のように。

2021年10月01日