『あなたが うまれた ひ』    寄稿者 ルピナス 

8月、暑い日が続くがこの月は私たちにとって大事な月である。
平和を祈るのは8月だけではないのだが、手に取る絵本はどうしてもそうした本になる。

今年、出会ったのは「あなたが うまれた ひ」という絵本である。以前から私のお気に入りの一冊だったが、今年は平和を祈る本の一つに加えたくなった。
1999年に福音館書店から「かがくのほん」として出版された。   
作者のデブラ・フレイジャーはアメリカの自然豊かなフロリダ州で育ち、自然と絵画・彫刻を結びつける芸術教育に携わってきた女性である。絵がとてもいい。
訳者は井上荒野。小説家としても有名らしい。画にふさわしい詩のような文章が素敵だ。
これは科学絵本である。人の誕生を科学の面からとらえている。
あなたが生まれる前、地球はくるりと回って朝と夜を用意した。太陽も月も引力も。海も山も木も。すべてを用意されたのはあなたの誕生を待っていたから。そして「あなたがうまれてとってもうれしい」と結ぶ。
父と母がどんなに待ち焦がれていたか、どんなに喜んだか、人の表情に触れることはない。この地上に人が誕生することの感謝を伝えるこの本は、創世記の初めを思わせる。神様は全てを作られて最後に人間を作られた。
大きい子供のために最後に地球の仕組みや木々の仕事、大気の役割、人種の問題などが「もっと知りたい人へ」と、科学本らしく添えられている。

殺す人はだれでもよかった、と世の中に恨みを持つ人の事件が報じられていた。思うようにいかない人生を幸福そうな人と比べて落ち込むことは、だれにもある。だが彼は地球のたくさんの営みに歓迎されてこの世に誕生してきたのだ。どの国の子どももそれは変わらない。
生まれる前にこんなにも素晴らしい地球を神様は用意してくださったことに思い至りたい。

2021年08月12日