昔は出前、今はデリバリー 寄稿者  銀鈴

昨今、歩いていると、黒っぽい四角い箱のようなもの
を背中にしょって、自転車で猛スピードで走る人たち
をよく見かける。女性もいる。箱の中には出来立ての
お料理が入っているそうだ。レストランなどのお店か
ら連絡があるとすぐ駆けつけてその料理を注文主に配
達するのだ。デリバリーと言うらしい。しかしいわゆ
る宅急便とは違うようだ。ピザの宅配は知っていたが
。ピザの場合は、ピザ店が直接配達するように思うが
、今、流行りのデリバリーは配達だけを専門にする。
レストランなどはその会社に登録し、連絡するとすぐ
配達員がお店にかけつけて、品物を受け取り例の箱に
入れて、注文主の家に届ける。料理を作るのと配達がきっちりと別れている。分業ということか。合理的ではある。コロナ禍になってデリバリーが急増していると聞く。

食べ物の配達と言えば、「出前」を思い出す。今でも町のお蕎麦屋さんや中華屋さんなど、昔から営業しているお店では配達しているところもある。「出前」は懐かしい。たくさんの思い出がある。下町独特の文化ではないと思うが、我が家でもよく出前を頼んだ。特に晩年の父と母は、二人だけの食事にたびたび利用していた。「うな重」と「おすし」を注文していた。めったに外食に出られなくなってからはそれが楽しみだったようだ。居合わせると私も参加したものだ。

昔は黒電話で出前、今はスマホでデリバリー。漢字がカタカナに変わったけれど、中身は同じようなものではないか。人の暮らしは時代が進んでも似たり寄ったりだと、おもわず微笑みたくなる。ところで、コロナ禍が収まったら、デリバリー業はすたれるだろうか。

2021年07月16日