ごちそう   寄稿者 そよかぜ

五月はわたしの月である。

子どもの頃、連休の後の私の誕生日はそれは晴れがましい一日だった。戦後の貧しい中で幼児期を過ごしたが、その日だけは私はお姫様だった。

母は特別のごちそうを作ってくれた。メニューはいつも同じで、ちらしずしである。酢飯に茶色いかんぴょうやシイタケや赤いニンジンを入れ、黄色い錦糸卵をたっぷり乗せる。きぬさややのりをぱらぱらと置けば、もううっとりするような晴れの日のごちそうだ。

物がない時代に野菜たっぷりのちらし寿司はなんておいしかったろう。なんて美しかったろう。

デザートはいちごだ。あの頃のいちごはすっぱかったが、色は宝石のように見事だった。つぶしてミルクと砂糖を入れた。濃いピンクのデザートをスプーンで食べた。お姫様にぴったりだった。

今は一年中いちごが出回っている。粒も大きく甘い。しかし私には子供のころ食べた小さくて酸っぱいいちごが思い出の原点だ。めったに買ってもらえなかったデザートを今は毎日のように食べている。

2021年05月26日