春を呼ぶ      寄稿者 ママレード

墨絵のような冬の景色が一変した。どの庭も鮮やかだ。

私の家の周りはまだまだ緑地がある。昔農家だった家はその広大な屋敷に大きな木があり、区の緑化に貢献している。

そこはもう農家とは言わない。「ファーム」と名付けている。どこかに畑があるかは知らないが、家のそばの畑の野菜をスタンドで売っている。形は悪いが新鮮で安いので時々利用している。

この季節、私の楽しみはミモザの花である。畑の隅に大きなミモザの樹がそびえている。春になると鮮やかな黄色い花をつける。色がないところに目も覚めるような黄色い花。数年前からその花を野菜スタンドで販売するようになった。

今年、3月初めになると、下の枝から花が咲きはじめた。その先っぽを小さな束にして売っているのを見たときは、やっと春が来たと思った。早速百円玉を入れて一つ買ってみた。

鮮やかな黄色はたちまち部屋を明るくした。

食卓に一つ、玄関のドアに一つ、リースに一つと、気が付けば3つのミモザの枝を買っていた。花は下から切っていくので、もう高いところにしか残っていない。

ミモザの花を見ているとブラウニングの「春の朝」の詩を口ずさみたくなる。

春の朝 時は春、日は朝、朝は七時、片岡に露みちて、揚雲雀なのりいで、蝸牛枝に這い、神、空に知ろしめす。すべて世は事もなし。(上田敏訳)

2021年03月27日