シュトーレン 寄稿者   ミルクティー

 ドイツ発祥のクリスマス菓子シュトーレン。12月初めの降誕節から少しずつ切って頂く。丸く白い形は、幼子イエス様のおくるみをあらわしているといわれる。
今年も7本のシュトーレンを注文した。同じ教会員のパン屋「ぶどうの実」のNさんがつくるシュトーレンは、レーズン、オレンジピール、シトロン等5種のフルーツをラム酒に漬けた中に、くるみ、アーモンドもふんだんに入っている。おいしく、美しく、良心的な価格だ。冷蔵庫で二週間、冷凍すれば一ヶ月もちますよとNさんは教えてくれた。

自宅用を二本にして、あとは誰に送ろうか? 母と考えてみる。うちの冷蔵庫の中でシュトーレンはもらわれていくのを待っている。
 十日過ぎて、シュトーレンは一本残っていた。もうあと四日しか賞味期限がない。母は「だれにあげようかね。これから冷凍庫に入れたら一ヶ月もつからね」と言う。「ちょっと待って。あと四日だよ。買った日に冷凍庫に入れないと、一ヶ月もたないんだよ」「大丈夫」母とは、賞味期限について意見が分かれてしまった。

あくる日、残った一本のシュトーレンは、自宅用になり母が1センチ幅に切り分けた。おいしそうなシュト-レンを見て、私はふと、近所のOさんSさんに差し上げたらと思い浮かんだ。しかし、なんとなく母に言えずに犬の散歩に出た。帰宅すると、シュトーレンはさらに横半分の大きさに切られていた。私は恐る恐る「OさんNさんに配るというのはどう?」と聞いてみた。母は「よそ様にあげるのなら小さく切らなかったのに」と言った。でも小さくともシュトーレンはシュトーレン。きれいにラッピングしたら、とても可愛いプレゼントになった。まだ三日期限がある。よかった、大丈夫。母はすぐOさん、Sさんの家に届けた。

 帰宅した母は、開口一番「Sさんとこの犬のリブちゃんが一週間前に死んじゃったんだって」と教えてくれた。え? 全然知らなかった。私も犬を飼っているから、リブちゃんとは散歩でよく会っていた。ラブラドールレトリバーの賢い犬だった。確かに最近見かけなかった。「Sさんとこ、みんな暗かったよ。もう次の犬は飼わないって」

 シュトーレンを届けたからわかったSさんの心の痛み。思えば子どもの頃、Sさん一家には大変お世話になった。もうすぐクリスマス。悲しみ嘆く人々の心に、光となって幼子イエス様がきてくださいますように。

2022年12月22日