クリスマスキャロル   寄稿者  カモミール

第四アドベントの日曜日。いつものように母と隣りの市の教会で礼拝を守る。教会からの帰りは、最近足が弱ってきた母のため、電車とタクシーを利用する。曇り空から急に雪が降りだし、吹雪になってきた。電車に乗って出発を待っていると、踏切で緊急の通報がなったとのことで、出発が30分遅れた。降りるA駅にタクシーを予約していたので、一度取り消して、電車がA駅に着いてから再度電話した。小さな田舎町のA駅には、タクシーは電話で呼ばないと乗れないのである。

「どのくらい待ちますか?」「15分くらいですね」とのこと。このA駅は新築したばかりの駅舎だが、昼間は人気がない。しかしなぜか最近駅ピアノが置かれるようになった。駅で15分待合室で待つのは、暖房も入っておらず寒い。そうだ、駅ピアノを弾こう! 簡単な讃美歌の本を持っている。クリスマスの曲を弾こう。私と母の他に駅員さんと待合室に2人いるだけ。3人のための15分間のステージである。 「きたりたまえわれらの主よ」「きよしこのよる」「あらののはてに」「まきびとひつじを」。4曲をたどたどしく弾いて15分たった。

タクシー乗り場へ向かうと、駅の入り口で、近くのM靴屋のご主人が雪かきをしていた。「こんにちは。Mさん」「この駅は駅員さんが一人で掃除まで手が回らないものでね」 Mさんは雪を片付けながら言った。
「タクシーはもう他の人を乗せて行っちゃいましたよ」。
え? Mさんによると、早めにタクシーが来てしまい、私がピアノを弾いている間にだれもいなかったので、他の客を乗せて行ってしまったとのこと。今日はなんてハプニングが多いのだろう。
改めてタクシー会社に電話して、その間Mさんと立ち話しする。
「そういえばピアノの音が聞こえてましたよ」

タクシーはすぐに来た。Mさんに別れをつげ、暖かい車内に乗り込んでやっとくつろいだ。家についてはたと気づいた。私と母の他に4人目の聴衆がいたのだ。だれも聴いていないと思ったクリスマスの讃美歌を、靴屋のMさんが雪かきしながら聴いていた。Mさんは駅前をライトアップしたり、よくお店でお茶を出してもてなしてくれる気持ちよい方である。

そういえば数日前、このふるさとの町の人々のことも祈りはじめたばかりだった。小さな祈りがきかれたのかもしれない。この町にも、クリスマスの恵みが豊かにありますように。救い主イエスさまに栄光あれ!

2022年12月21日