「私のために祈ってください」     寄稿者 ルピナス  

珍しく大人の本を借りた。
若いころや中年のころはよく本を読んでいたが、このごろは必要に迫られて読んでいることに気が付いた。図書館にはよく行くが、そして本もよく借りるが、気楽な読みやすい本ばかり。だって目が疲れるとか、集中力がないからとか、言い訳ばかり。
ところが先日借りた本ははじめから借りるつもりで、メモを取って探した本である。

ある会で「隣人愛」について話が出た。その中で1冊の本が話題になった。マザーテレサである。マザーテレサの本はあちこちの出版社から出ており、何冊か読んでいる。それより国際的な有名人で、だれが執筆しても彼女のすばらしさをたたえていた。その働きがあまりにも偉大なので、本など読まなくても「ああ、あの偉人だ」と思う。

しかし『マザーテレサ 来て、私の光となりなさい』は全く違っていた。彼女の心の闇と苦悩をつづった私的書簡である。
誰がマザーテレサが信仰の問題で悩んでいたと思うだろうか。神様と人間は全く違うことはよくわかっている。しかし神様から選ばれた特別の人は、私たちとは全く次元が違う存在なのだと思っていた。

カトリックではシスターたちに霊的指導者がつくそうだ。相談相手になったり霊の指導をしたりするらしい。彼らにあてた私信が残っていて、その中のいくつかが若いころから最後までの手紙と解説で編集されていた。
この本ははじめ外国で出版され、それを英語で読んだ人がいた。のちに翻訳され、日本でも読まれるようになったというので借りてみた

なんとぶ厚い大著だった。しかし読み始めるとやめられなくなった。偉人とあがめられ多くの賞を得た彼女が何に苦しみ、そして神様と向き合っていたか。すぐに答えを下さらない神様。栄誉ではなく神の声を聴きたかったマザーテレサ。
晩年の彼女はもう暗黒の中にはいない。何のための闇だったのか。「私のために祈ってください」という言葉が何回も繰り返されていた。あと少しで読了予定。

2022年09月04日