ふたつの合唱曲      寄稿者 ミルクティー

今年も東日本大震災のおきた3月11日がめぐってきた。その五日後の16日深夜、福島は最大震度6強の大地震に見舞われた。百人近くが避難生活を送り、一部で断水が続いていた。住宅の被害も多く深刻である。幸い私の家は壁のひびが深くなった程度ですんだが、友人の家は割れた物が散乱し、足の踏み場もないほどであり、昨年2月に引き続きまたかとの思いでなかなか片付かないとのことであった。

これは11年前の大震災を忘れるなという警告であろうか? コロナ禍、ロシアによるウクライナ侵攻など不安で暗く落ちこむニュースが続く中、私はふたつの合唱曲に出会い、毎日口ずさむようになった。

「夜明けから日暮れまで」(作詞:和合亮一、作曲:信長貴富)
毎年福島県で開催される、声楽アンサンブルコンテスト全国大会の表彰式で、最後に参加者と会場全員で歌うため、震災の鎮魂と再生の思いをこめて作られた曲である。今年の福島県主催の追悼復興祈念式でも、献唱された。「夜明け」に象徴される希望の光が、さわやかな曲調で表現され、風、山、雲、丘と福島の自然が歌われ、最後は力強く未来へ漕ぎだしていく人々へのエールとなっていく。YouTubeで何度も聴き、楽譜を取り寄せ、口ずさんでいる。

「群青」(作詞:南相馬市立小高中学校平成24年度卒業生、作曲:小高中学校教諭小田美樹)
福島県南相馬市小高区は、原発20キロ圏内で、住民全員が避難を余儀なくされた地区である。小高中学校の生徒が、離ればなれになった仲間を思いつつ、つぶやいた思いを綴った日記や作文、他愛ないおしゃべりから、小田先生が生徒達の思いをつなぎ合わせ、曲をつけた作品である。一度聴いたらメロデイーが頭から離れなくなるほど親しみやすい曲で、生徒たちの群青の町南相馬への思いにあふれている。

聖歌498番に「主にすがる我に悩みはなし。歌いつつ歩まん。この世の旅路を」とある。病、戦争、地震など暗闇の世にあっても、明けの明星たる主イエスにおすがりし、十字架の下に重荷を下ろして、希望の歌を口ずさんで歩んでいきたい。(これらの曲をYouTubeでご一聴されることをお薦めする)

2022年03月26日