窓を開ける 寄稿者  ルピナス

外には恐ろしいウイルスが蔓延しているなどとはまるで想像できないような2月のよく晴れた日。ベランダいっぱいに布団を干した。甘夏ミカンの木は、今年は個数が少ないが、大きな実をつけている。ママレード作りがここ数年の冬の我が家の仕事だ。

『あさになったので まどをあけますよ』という荒井良二の絵本がある。山や海や野原、もちろん町の絵もある。キーワードは「あさになったので まどをあけますよ」である。みずみずしい絵に繰り返しこの言葉が重ねられていく。

私はこの絵本が好きで、人の前で読んだり一人で眺めたりしている。

朝が来た。人は何をするだろう。

寒いこの頃は布団から出るのもおっくうだ。でもいつまでもそのままでいることはできない。仕事をしていた時はとんでもない時間に朝ご飯を食べていたものだった。今は自由時間の中で、だらしなくならないように気を付けながら、ゆっくりと過ごしている。

着替えてまずすることが雨戸開けである。大家族がいたころ建てた家なので雨戸がたくさんある。二階の部屋をまず開ける。朝日が入ってくる。

下の部屋の雨戸を開けると、プランターの花が目に入る。この寒さなのに、きちんと花をつけている。「偉いわねえ」と、思わず声をかける。だってそうではないか。明け方の凍るような冷たい空気にも負けず律義に花を咲かせている。パンジー、桜草、ガーデンシクラメン…思いつくままに秋の日に植えた草花だ。

母も雨戸開けと夕方の雨戸閉めが日課だった。体が動かなくなっても「早くしないと…」とつぶやいていた。今の私よりずっと年上だったが。

窓を開けると何かが変わる。新しいページになる。その瞬間が好きだ。

2022年02月07日